在留資格「特定活動」:日本語能力の高い留学生に対する就職支援

 2019年5月より,日本国内の大学又は大学院を卒業・修了した留学生の就職支援を目的として,同卒業者が日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することを希望する場合は,在留資格「特定活動」による入国・在留が認められることとなりました。

 これは,同卒業者が日本の公私機関において,大学等において修得した広い知識,応用的能力等のほか,留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として,幅広い業務に従事する活動を認めるものです。

 在留資格「技術・人文知識・国際業務」では,主な活動が一般的なサービス業務や製造業務等の場合は認められませんが,本制度においては,上記諸要件が満たされれば,これらの活動も可能となります。ただし,法律上資格を有する方が行うこととされている業務(業務独占資格が必要なもの)及び風俗関係業務に従事することは認められません。

(出入国在留管理庁『 留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン 』より)

1.対象者

本邦の大学を卒業又は大学院の課程を修了し,学位を授与された方で,高い日本語能力を有する方が対象となります。

(1)学歴について

 日本の4年制大学の卒業及び大学院の修了に限られます。短期大学及び専修学校の卒業並びに外国の大学の卒業及び大学院の修了は対象になりません。

(2)日本語能力について

(ア) 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する方が対象です。

(イ) その他,大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した方については,アを満たすものとして取り扱います。

 なお,外国の大学・大学院において日本語を専攻した方についても,(ア)を満たすものとして取り扱いますが,この場合であっても,併せて日本の大学・大学院を卒業・修了している必要があります。

2.「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」について

 「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とは,単に雇用主等からの作業指示を理解し,自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず,いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や,自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ,他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。

3.「本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること」について

 従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること,又は,今後当該業務に従事することが見込まれることを意味します。

4.具体的な活動例

 本制度によって活動が認められ得る具体的な例は以下のとおりです。

(1)飲食店

 店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行うもの。なお、それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含みますが、 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。

(2)工場

 日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,自らもラインに入って業務を行うもの。ただし、 ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。

(3)小売店

 仕入れや商品企画等と併せ,通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うもの。なお、それに併せて,日本人に対する接客販売業務を行うことを含みますが、 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。

(4)宿泊施設

 翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設,更新作業を行うものや,外国人客への通訳(案内),他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの。なお、それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含みますが、客室の清掃にのみ従事することは認められません。

(5)ドライバーガイド

 タクシー会社に採用され,観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ,自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの。なお、それに併せて,通常のタクシードライバーとして乗務することを含みますが、 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。

(6)介護施設

 外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら,外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り,介護業務に従事するもの。ただし、 施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

5.雇用形態等について

(1)フルタイムであること

 「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて,当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動」であること。つまりフルタイムの職員としての稼働に限られ,短時間のパートタイムやアルバイトは対象になりません。また、契約機関の業務に従事する活動のみが認められ,派遣社員として派遣先において就労活動を行うことはできません。

(2)日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

 一定の報酬額を基準として一律に判断するものではなく,地域や個々の企業の賃金体系を基礎に,同種の業務に従事する日本人と同等額以上であるか,また,他の企業の同種の業務に従事する者の賃金を参考にして日本人と同等額以上であるかについて判断します。

 また,本制度の場合,昇給面を含めて,日本人大卒者・院卒者の賃金を参考とします。その他,元留学生が本国等において就職し,実務経験を積んでいる場合,その経験に応じた報酬が支払われることとなっていることについても確認します。

6.在留資格の変更及び在留期間の更新許可申請に際し

 在留資格の変更及び在留期間の更新許可申請においては,「素行が不良でないこと(例えば,資格外活動許可の条件に違反して,恒常的に1週について28時間を超えてアルバイトに従事していた)」や「入管法に定める届出等の義務を履行していること(在留カードの記載事項に係る届出,在留カードの有効期間更新申請,紛失等による在留カードの再交付申請,在留カードの返納等の義務を履行している)が必要です。

 家族の滞在(申請者の扶養を受ける配偶者又は子)については「特
定活動」(本邦大学卒業者の配偶者等)の在留資格で,日常的な活動が認められます。

7.申請時の提出資料

(1)在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請

① 申請書(在留資格認定証明書交付申請書・在留資格変更許可申請書 )

② 写真(縦4cm×横3cm)

③ 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上,404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通

 在留資格認定証明書交付申請時のみ。

④ パスポート及び在留カード

 在留資格変更許可申請時に提示のみで,提出していただく必要はありません。

⑤ 申請人の活動内容等を明らかにする資料

 労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき,労働者に交付される労働条件を明示する文書(写し)

⑥ 雇用理由書

  雇用契約書の業務内容から,日本語を用いた業務等,本制度に該当する業務に従事することが明らかな場合は提出不要です。所属機関が作成したものが必要です。様式は自由ですが,所属機関名及び代表者名の記名押印が必要です。

⑦ 申請人の学歴を証明する文書

 卒業証書(写し)又は卒業証明書(学位の確認が可能なものに限ります。)

⑧ 申請人の日本語能力を証明する文書

 日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上の成績証明書(写し)。なお,外国の大学において日本語を専攻した者については,当該大学の卒業証書(写し)又は卒業証明書(学部・学科,研究科等が記載されたものに限ります。)

⑨ 事業内容を明らかにする次のいずれかの資料

(ア) 勤務先等の沿革,役員,組織,事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書
(イ) その他の勤務先等の作成した上記アに準ずる文書
(ウ) 勤務先のホームページの写し(事業概要が確認できるトップページ等のみで可)
(エ) 登記事項証明書

(注)転職による在留資格変更許可申請については,⑦及び⑧は不要です。

(2)在留期間更新時

① 申請書(在留期間更新許可申請書)

② 写真(縦4cm×横3cm)

③ パスポート及び在留カード

 提示のみで,提出していただく必要はありません。

(4)課税証明書及び納税証明書

 証明書が取得できない期間については,源泉徴収票及び当該期間の給与明細の写し,賃金台帳の写し等

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