
本邦の大学又は専門学校等を卒業した留学生が、在留資格「技術・人文知識 ・国際業務」に変更する上で、理学,工学その他の自然科学の分野又は法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事する活動である必要があります(つまり専攻科目と業務との関連性の有無)。
行おうとする活動が「技術・人文知識・国際業務」に該当するもので あるか否かは,在留期間中の活動を全体として捉えて判断されます。したがって、いわゆる単純な業務や,反復訓練によって従事可能な業務を行う場合には,「技術・人文知識・国際業務」に該当しないと判断されますが、たとえば、入社当初に行われる研修の一環であって,今後業務を行う上で必ず必要となるものである場合や,日本人についても入社当初は同様の研修に従事するといった場合は、あらかじめ具体的な研修計画等を提出することにより,認められる場合があります。
また、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。この場合の報酬とは「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」 をいい,通勤手当,扶養手当,住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除きます。)は含みません。
不許可事例
1.大学を卒業した留学生に係る不許可事例
(1)経済学部を卒業した者から,会計事務所との契約に基づき,会計事務に従事するとして申請があったが,当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから,そのことについて説明を求めたものの,明確な説明がなされなかったため,当該事務所が実態のあるものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認められないことから不許可となったもの。
(2)教育学部を卒業した者から,弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され,弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが,当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。
(3)工学部を卒業した者から,コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき,月額13万5千円の報酬を受けて,エンジニア業務に従事するとして申請があったが,申請人と同時に採用され,同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから,報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可となったもの。
(4)商学部を卒業した者から,貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき,海外取引業務に従事するとして申請があったが,申請人は「留学」の在留資格で在留中,1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが今次申請において明らかとなり,資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから,その在留状況が良好であるとは認められず,不許可となったもの。
2.本邦の専門学校を卒業し,専門士の称号を付与された留学生に係る不許可事例
① 専攻科目と従事する業務内容の関連性以外の判断)
(1)日中通訳翻訳学科を卒業した者から,輸出入業を営む企業との雇用契約に基づき,月額17万円の報酬を受けて,海外企業との契約書類の翻訳業務及び商談時の通訳に従事するとして申請があったが,申請人と同時に採用され,同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額20万円であることが判明したため,日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの。
(2)情報システム工学科を卒業した者から,本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき,月額25万円の報酬を受けて,コンピューターによる会社の会計管理(売上,仕入,経費等),労務管理,顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが,会計管理及び労務管理については,従業員が12名という会社の規模から,それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと,顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可となったもの。
(3)ベンチャービジネス学科を卒業した者から,本邦のバイクの修理・改造,バイク関連の輸出入を業務内容とする企業との契約に基づき,月額19万円の報酬を受けて,バイクの修理・改造に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,フレームの修理やパンクしたタイヤの付け替え等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず,「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(4)国際情報ビジネス科を卒業した者から,本邦の中古電子製品の輸出・販売等を業務内容とする企業との契約に基づき,月額18万円の報酬を受けて,電子製品のチェックと修理に関する業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,パソコン等のデータ保存,バックアップの作成,ハードウェアの部品交換等であり,当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするもとのは認められず,「技術・人文知識・国際業務」に該当しないため不許可となったもの。
(5)専門学校における出席率が70%である者について,出席率の低さについて理由を求めたところ,病気による欠席であるとの説明がなされたが,学校の欠席期間に資格外活動に従事していたことが判明し,不許可となったもの
(6)ビルメンテナンス会社において,将来受け入れる予定の外国人従業員への対応として,通訳業務,技術指導業務に従事するとして申請があったが,将来の受入れ予定について何ら具体化しておらず,受入れ開始までの間については,研修を兼ねた清掃業務に従事するとして申請があり,当該業務が「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(7)ホテルにおいて,予約管理,通訳業務を行うフロントスタッフとして採用され,入社当初は,研修の一環として,1年間は,レストランでの配膳業務,客室清掃業務にも従事するとして申請があったが,当該ホテルにおいて過去に同様の理由で採用された外国人が,当初の研修予定を大幅に超え,引き続き在留資格該当性のない,レストランでの配膳業務,客室清掃等に従事していることが判明し不許可となったもの。
(8)人材派遣会社に雇用され,派遣先において,翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが,労働者派遣契約書の職務内容には,「店舗スタッフ」として記載されており,派遣先に業務内容を確認したところ,派遣先は小売店であり,接客販売に従事してもらうとの説明がなされ,当該業務が「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(9)電気部品の加工を行う会社の工場において,部品の加工,組み立て,検査,梱包業務を行うとして申請があったが,当該工場には技能実習生が在籍しているところ,当該申請人と技能実習生が行う業務のほとんどが同一のものであり,申請人の行う業務が高度な知識を要する業務であるとは認められず,不許可となったもの。
(10)栄養専門学校において,食品化学,衛生教育,臨床栄養学,調理実習などを履修した者が,菓子工場において,当該知識を活用して,洋菓子の製造を行うとして申請があったところ,当該業務は,反復訓練によって従事可能な業務であるとして,不許可となったもの。
② 専攻した科目との関連性が認められず,不許可となったもの
(1)声優学科を卒業した者が,外国人客が多く訪れる本邦のホテルとの契約に基づき,ロビースタッフとして翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。
(2)イラストレーション学科を卒業した者から,人材派遣及び有料職業紹介を業務内容とする企業との契約に基づき,外国人客が多く訪れる店舗において,翻訳・通訳を伴う衣類の販売業務に従事するとして申請があったが,その業務内容は母国語を生かした接客業務であり,色彩,デザイン,イラスト画法等の専攻内容と職務内容との間に関連性があるとは認められず,また翻訳・通訳に係る実務経験もないため不許可となったもの。
(3)ジュエリーデザイン科を卒業した者が,本邦のコンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき,外国人客からの相談対応,通訳や翻訳に関する業務に従事するとして申請があったが,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。
(4)国際ビジネス学科において,英語科目を中心に,パソコン演習,簿記,通関業務,貿易実務,国際物流,経営基礎等を履修した者が,不動産業(アパート賃貸等)を営む企業において,営業部に配属され,販売営業業務に従事するとして申請があったが,専攻した中心科目は英語であり,不動産及び販売営業の知識に係る履修はごくわずかであり,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。
(5)国際ビジネス学科において,経営戦略,貿易実務,政治経済,国際関係論等を履修した者が,同国人アルバイトが多数勤務する運送会社において,同国人アルバイト指導のための翻訳・通訳業務及び労務管理を行うとして申請があったが,教育及び翻訳・通訳業務と専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。
(6)国際コミュニケーション学科において,接遇,外国語学習,異文化コミュニケーション,観光サービス論等を履修した者が,飲食店を運営する企業において,店舗管理,商品開発,店舗開発,販促企画,フランチャイズ開発等を行うとして申請があったが,当該業務は経営理論,マーケティング等の知識を要するものであるとして,専攻した科目との関連性が認められず不許可となったもの。
(7)接遇学科において,ホテル概論,フロント宿泊,飲料衛生学,レストランサービス,接遇概論,日本文化等を履修した者が,エンジニアの労働者派遣会社において,外国人従業員の管理・監督,マニュアル指導・教育,労務管理を行うとして申請があったが,専攻した科目と当該業務内容との関連性が認められず不許可となったもの。
3.専門士の称号を付与された留学生が「翻訳・通訳」業務に従事するとして申請を行う場合の注意点
この場合、専修学校における専攻との関連性のみならず,当然のことながら,実際に翻訳・通訳業務に従事することができるだけの能力を有していること,就職先に翻訳・通訳を必要とする十分な業務量があることが必要です。
専修学校における専攻との関連性としては,履修科目に「日本語」に関連する科目が相当数含まれている場合であっても,留学生が専門分野の科目を履修するために必要な専門用語を修得するための履修である場合や,日本語の会話,読解,聴解,漢字等,日本語の基礎能力を向上させるレベルに留まるもの,同一の専門課程において,日本人学生については免除されている(日本人が履修の対象となっていない)ような「日本語」の授業の履修については,翻訳・通訳業務に必要な科目を専攻して卒業したものとは認められません。
(1)CAD・IT学科において,専門科目としてCAD,コンピュータ言語,情報処理概論等を履修し,一般科目において日本語を履修したが,日本語の取得単位が,卒業単位の約2割程度しかなく,当該一般科目における日本語の授業については,留学生を対象とした日本語の基礎能力の向上を図るものであるとして,不許可となったもの。
(2)国際ビジネス専門学科において,日本語,英語を中心とし,経営学,経済学を履修したが,当該学科における日本語は,日本語の会話,読解,聴解,漢字等,日本語の基礎能力を向上させるレベルに留まるものであり,通訳・翻訳業務に必要な高度な日本語について専攻したものとは言えず不許可となったもの。
(3)国際コミュニケーション学科において,日本語の文法,通訳技法等を履修した者が,新規開拓を計画中であるとする海外事業分野において,日本語が堪能である申請人を通訳人として必要とする旨の雇用理由書が提出されたが,申請人の成績証明書及び日本語能力を示す資料を求めたところ,日本語科目全般についての成績は,すべてC判定(ABCの3段階評価の最低)であり,その他日本語能力検定等,日本語能力を示す資料の提出もないことから,適切に翻訳・通訳を目的とした業務を行うものとは認められず不許可となったもの。
(4)通訳・翻訳専門学校において,日英通訳実務を履修した者が,ビル清掃会社において,留学生アルバイトに対する通訳及びマニュアルの翻訳に従事するとして申請があったが,留学生アルバイトは通常一定以上の日本語能力を有しているものであり,通訳の必要性が認められず,また,マニュアルの翻訳については常時発生する業務ではなく,翻訳についても業務量が認められず不許可となったもの。
(5)翻訳・通訳専門学校において,日英通訳実務を履修した者が,翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが,稼働先が飲食店の店舗であり,通訳と称する業務内容は,英語で注文を取るといった内容であり,接客の一部として簡易な通訳をするにとどまり,また,翻訳と称する業務が,メニューの翻訳のみであるとして業務量が認められず不許可となったもの
(6)日本語・日本文化学科を卒業した者が,人材派遣及び物流を業務内容とする企業との契約に基づき,商品仕分けを行う留学生のアルバイトが作業する場所を巡回しながら通訳業務に従事するとして申請があったが,その具体的な内容は,自らも商品仕分けのシフトに入り,アルバイトに対して指示や注意喚起を通訳するというものであり,商品仕分けを行うアルバイトに対する通訳の業務量が認められず不許可となったもの。
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